研究概要 |
[目的] 本研究ではC4光合成の律速酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)をとりあげ、1)本酵素の可逆的リン酸化による活性調節の動態の解明、2)このリン酸化に関与するプロテインキナーゼ(PK)の同定とこれに連なるシグナル伝達機構の解明および、3)本酵素遺伝子の発現調節すなわち、転写やmRNAの安定性などの段階における調節機構の解明などを目指す。 [結果・考察] 1)すでに、トウモロコシC4型PEPCの調節的リン酸化(Ser-15)のみを特異的に識別するウサギ抗体を開発しているが、これを用いて露地栽培の成熟トウモロコシにおける二酸化炭素の吸収速度とPEPCのリン酸化状態との相関を日周的に調べ、光合成よりリン酸化が先行することをみとめた。2)C4型PEPC遺伝子の発現が窒素源の供給状態によっても制御を受けることが発見されているので、リン酸化についてもNストレスの影響を調べたところ、N欠乏によってリン酸化の方はさほど影響がないことが示唆された。3)CO2濃度を大気中(350ppm)より下げたとき(200ppm)、PEPCのレベルが上昇し、リン酸化の程度も上昇した。しかし、上げたとき(700ppm)には影響はみられなかった。4)PEPC-PK(プロテインキナーゼ)としてCa^<2+>-非依存性のもの(CIDPK,約30kDa)を高度に精製し、その酵素的性質を調べた。5)低温誘導性のCa^<2+>-依存性CDPKの生理的役割を解明するため、イネのホモログを分離し、センスとアンチセンス方向に導入した形質転換体を作出し、その効果を調べた。6)PEPC遺伝子の発現のオカダ酸による阻害の機構、特にmRNAの寿命とリン酸化の関係をRNA合成阻害剤を用いて解析した。
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