Xlim-1の転写活性化領域をengrailedの転写抑制領域と置き換えたドミナン卜・ネガティブ型コンストラクト(Xlim1-enR)をmRNA微量注入法によりオーガナイザー領域に発現させたところ、高率に頭部を欠損した胚が得られる。そこで分子マーカーを用いて脳の欠失部位を調べたところ、脳峡のマーカーen-2は消失し、後脳のマーカーのKro x20の発現は残ることより欠失領域は後脳より前方部分であることが判明した。この表現形はマウスのLim1ホモ変異体の表現形と良く一致していることより、内在性のXlim-1の機能阻害によるものと予想された。このことはXlim1-enRがXlim-1のin vivoでの転写因子としての機能を解析する上で有用な手段となり得ることを示している。そこでXlim1-enRによる阻害効果を背側中胚葉特異的分子マーカーで調べたところ、chordin、Otx2、cerberusの発現は強く抑制されることが示された。活性型Xlim-1はアニマルキャップにおいてchordinとOtx2の発現を引き起こすことは既に示されていたが、今回さらにcerberusの発現も引き起こすことが見い出され、これらの遺伝子はいずれもXlim-1の標的遺伝子の有力候補となった。 昨年度に引き続きXlim1-enRの特異性を調べるために回復実験を試みた。Xlim1-enRと共注入するものとしては、活性型とxlim-1(LIMドメイン点変異体と欠失変異体)、野生型Xlim-1、野生型Xlim-1とLdb1、で行ったが、何れによっても回復は認められなかった。アニマルキャップアッセイにおいてアクチビン処理で引き起こされるchordinとcerberusの発現はXlim1-enRにより抑制されるが、野生型Xlim-1の共発現では回復するよりむしろ協調的に抑制が増強された。Xlim-1はLdb1と共に4量体を生成するとされているが、今回我々の得た結果はXlim-1がこの様な転写因子複合体として機能していることを示唆しており、今後のXlim-1の機能ドメインの詳細な解析の必要性を示している。
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