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1998 年度 実績報告書

頭部間葉の振る舞いから見た脊椎動物形態プランの進化

研究課題

研究課題/領域番号 10171227
研究機関岡山大学

研究代表者

倉谷 滋  岡山大学, 理学部, 教授 (00178089)

キーワード形態学 / 脊椎動物 / 発生学 / 神経堤細胞 / 形態パターニング / 中胚葉 / ホメオボックス遺伝子 / レチノイド
研究概要

ヤツメウナギ類の一種、カワヤツメにおける頭部形態形成機構の理解の一環として、初期胚のレチノイン酸による処理による形態変化、ならびに、正常発生における頭部間葉系の分子的、細胞学的、形態発生的挙動、を観察した。レチノイン酸は、多くの脊椎動物の初期発生におけるのと同様、0.1μMの濃度において、頭部に特異的に変化をもたらした。しかしながら、これまでの解釈とは異なり、欠失したのはもっぱら鰓弓系に属する形態要素であり、一方、体節中胚葉については目立った変化はなかった。影響を受けた部分、受けなかった部分の境界は、古典的な形態学における「体節分節性と鰓弓分節性」の境界に一致し、脊椎動物頭部が本来的に鰓弓系に根ざした構造物であることを伺わせた。また、神経堤細胞の観察においては、顎口類の発生パターンと同じ分布、同じ細胞系譜、同じ遺伝子(ホメオボックス遺伝子、Otxの相同物)発現が頭部において見られた。また、ナメクジウオの外観との類似性から、原始的な形態をとどめると解釈されてきた、ヤツメウナギの中胚葉についても観察を行ったところ、初期発生過程においては、それが明らかに無分節的な頭部中胚葉と後耳領域だけに発生する体節中胚葉からなり、顎口類において知られているのと同じパターンを持つことが明らかになった。ナメクジウオとの見かけ上の類似性は、発生後期において二次的に得られるものなのである。以上のように、これまで顎口類において認識されてきた脊椎動物のモルフォタイプは、ほとんどそのままの姿でヤツメウナギ類にも存在する。この、保守的な胚の形態パターン(すなわち脊椎動物のモルフォオタイ)は顎口類とヤツメウナギ類の分岐地点以前に、祖先的動物においてすでに獲得されていたものであろうと推測することが出来る。

  • 研究成果

    (7件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (7件)

  • [文献書誌] Kuratani,S.: "Rostral truncation of a cyclostome, Lampetra japonica, induced by all-trans retinoic acid defines the head/trunk interface of the Vertebrate body" Dev.Dyn.211. 35-51 (1998)

  • [文献書誌] Kuratani,S.: "Stereotyped axonal bundle formation and neuromeric patterns in mebryos of a cyclostome, Lampetra japonica." J.Comp.Neurol.391. 99-114 (1998)

  • [文献書誌] Sekimoto,T.: "Region-specific expressions of murine Hox genes implies the Hox codemediated patterning of the digestive tract." Genes to Cells. 3. 51-64 (1998)

  • [文献書誌] Ueki,T.: "otd/Otx cognates in a lamprey,Lampetra japonica." Dev.Genes Evol.208. 223-228 (1998)

  • [文献書誌] Horigome,N.: "Development of cephalic neural crest cells in embryos of Lampetra japonica, with special reference to the evolution of the jaw." Dev.Biol.206(in press). (1999)

  • [文献書誌] 倉谷 滋: "岩波講座・現代医学の基礎" 「人体の成り立ち」15ヒトの頭部, 20 (1999)

  • [文献書誌] 倉谷 滋: "朝倉書店・古生物の科学(印刷中)" 相同性とは何か:発生と進化とを結び付ける形態学的認識について, (1999)

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公開日: 1999-12-11   更新日: 2016-04-21  

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