研究概要 |
HSP47はシャペロンとして働きかける蛋白質がプロコラーゲンに限られる点が他のシャペロン分子との大きな相違で、コラーゲン特異的シャペロンとして機能することが推測されている。コラーゲンの合成とHSP47の合成は細胞レベル、組織レベルで例外なく一致することから、コラーゲンの合成、分泌過程に密接に関与するものと考えられている。禾研究においては、腎間質線維化モデルである一側尿管結紮モデル(UUO)において、尿管結紮後のHSP47発現動態を解析することで、HSP47の線維化病変形成における関与を明らかにすることを第一の目的とした。この検討で、尿管結紮後12-24時間後にすでにHSP47の遺伝子発現が誘導され、その後ややおくれで病理学的に明らかな間質線維化が発症する事を見いだした(T.Moriyama et al.Kidney Intemational,54,110-119,1998)。また、この線維化モデルにおいて線維化抑制作用を有することが知られているアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)投与実験も行ったが、ACEIは結紮後12-24時間におけるHSP47発現には影響せず、4日、7日後で約50%抑制するという結果を得た。こレらの結果は、レニンアンギオテンシン系はHSP47の直接の誘導刺激でないこと、またストレス応答の範疇に含まれてもよい短い時間経過で誘導されたHSP47が、結果として線維化病変に結びついた可能性を示している。我々は、この結紮後早期のHSP47発現誘導刺激を同定することは線維化進展抑制治療のターゲットとして意義があると考え検討を開始した。現在、誘導刺激として酸化ストレスを第一候補と考えUUOモデルの間質病変における酸化ストレス亢進を明らかにしつつあり、さらに抗酸化剤投与による線維化、酸化ストレス、HSP47発現の変化を解析中である。
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