研究概要 |
cogマウスは、チログロブリン(Tg)のC末端アセチルコリンエステラーゼ様ドメイン内にLeu2263→Pro変異をもつため分泌異常となり、異常Tgが小胞体に蓄積し、BiP.ERp72、ER60、カルレティキュリンなどの小胞体シャペロンを誘導するとともに先天性甲状腺腫を引き起こすことが知られている(Kim PS,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95,9909,1998)。本研究で我々は、CHO細胞においてcog型Tgを発現させ、その分泌異常の細胞機構を調べた。パルスチェイス解析の結果、cog型Tgは半減期6時間で細胞内分解されることが示された。この分解はプロテアソーム阻害剤のほかキフネンシンなど小胞体マンノシダーゼIの阻害剤やシクロへキシミドなどタンパク質合成阻害剤の添加によって阻止された。しかし、カルネキシン・カルレティキュリンなど小胞体のレクチン様シャペロンとの会合を阻止するグルコシダーゼ阻害剤(カスタノスペルミン)は、cog型Tgの細胞内分解に影響を与えなかった。また、免疫沈降によってもcog型Tgとこれらシャペロンとの会合は検出されず、cog型Tgの品質管理はカルネキシン・カルレティキュリン以外のシャペロンによって行われる可能性が高い。さらに、細胞内でのマンノースレクチンとして知られるERGIC-53とcog型Tgとの会合も見られなかった。これらの知見はcog型Tgのタンパク質部分での折りたたみ異常とN型糖鎖のMan9型からMan8B型へのマンノーストリミングが異常タンパク質の細胞内分解において重要なシグナルになることと、品質管理の認識機構に重要な新規Man8B型認識レクチンの存在を示唆している。
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