研究概要 |
3種類のヒトHSP90ファミリータンパク質(HSP90α、βおよび小胞体型HSP90であるGRP94)と真核細胞HSP90の大腸菌ホモローグであるHtpGを大腸菌発現系にて発現精製し抗体を作成した。これまでの報告に食い違いのみられる細胞質中でのHSP90アイソフォームの存在状態について検討した。この解析のためにタンパク質の電気泳動中の重合や解離の変化を検出できる新規の二次元電気泳動法を考案した(Nemoto&Sato,1998a)。本法によりHSP90α、βは本来はオリゴマーで存在しているにもかかわらず、非変性状態での電気泳動条件でも、HSP90αはダイマーにまで、HSP90βはほとんどがモノマーにまで解離してしまうことが判明した(Nemoto&Sato,1998b)。 細胞におけるHSP90ファミリータンパク質のストレス誘導性を検討するために、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞において、反復伸展刺激、熱ショック、亜ヒ酸処理を行い検討した。非ストレス条件での同細胞やラット組織での発現状態も検討した。その結果、HSP90αの組織特異的、ストレス誘導性の発現とHSP90βの普遍的、恒常的発現が明らかとなった。全身性エリトマトーデス患者のもつ抗HSP90抗体の性質について検討し、HSP90βアイソフォームに選択的に結合する抗体を保持することを示した。 都臨床研の矢原らとの共同研究により、HSP90ダイマーは直列に並んだ4構造からなると判明した(Maruya et al.,in press)。私たちの以前の報告を考え合わせ、電顕観察でのHSP90ダイマーの4構造(以下の[ ]_<1〜4>を示す)は、一次構造上の3ドメイン(A1〜C1、A2〜C2:ダイマーの各ペプチドを1、2で示す)が[A1]_1-[B1/C2]_2-[C1/B2]_3-[A2]_4と並んで形成されていると結論した。
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