シアノバクテリアSynechococcus sp.PCC7942株の3つのDnaKおよびDnaJ、ならびに大腸菌のDnaK.DnaJの各蛋白質を精製した。シアノバクテリアのDnaK3およびDnaJは他の蛋白質に比べて可溶性が低く、高濃度標品は得られなかったが、これらを用いて、DnaK ATPase活性のDnaJによる促進効果、および分析用超遠心を用いた沈降平衡法によるDnaKとDnaJの相互作用解析を行った。これらの結果では、DnaKとDnaJのすべての組み合わせで活性が測定できたが、組み合わせによる特異性、すなわちある特定の組み合わせの時が特に高い活性を持つということは観察されず、特異性の発揮にはシャペロンだけでなく基質を加えた系での検定が必要と考えられた。次に相互作用の検定を行うために遺伝的手法を用いた。PCR変異法を用いてdnaK3の基質認識領域およびdnaJ領域に変異処理を行い、宿主に戻すことによって温度感受性になった株を得た。このうちいくつかの株において変異点を同定したが、DnaK3に関してはその多くが基質を取り囲むように並ぶβシート構造の中に落ちていた。この点は大腸菌蛋白質で最近同定された変異点がβシート間のループ中に落ちているのに対して特徴的であった。一方DnaJに関しては、すべてJドメインと呼ばれるDnaKとの相互作用に必要といわれている領域内に落ちていた。また、DnaK3がチラコイド膜に多く局在していることから、変異林における光合成活性を酸素電極によって測定した。その結果、dnaK3変異林は野生林に比べて明らかに、温度シフト後の光合成能が低下していた。dnaK3変異株からはサプレッサー変異株が得られ、dnaK3分子内やdnaJの変異でないことを確認した。
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