我々は、ヒスチジンタグ付きTBPを用いて多くのTBP結合蛋白質群(TBP-Interacting Proteins:TIPs)を検出しているが、このうち耐熱性の120kD蛋白質TIP120は、既知のモチーフ構造を持たない新しい因子であり、TBPとin vitroで直接結合し、核抽出液中で会合している事などが既に確かめられている。昨年の本会において、組み換え体TBP、TFIIB、TFIIFと仔牛胸腺より精製したRNAポリメラーゼII(Pol II)によるin vitro再構成系転写系において、TIP120が閉環状DNAを鋳型としたアデノウィルス主要後期(AdML)プロモーター、及びE4プロモーターからの転写を活性化する、全く新しい基本転写活性化因子であることを報告した。その機構としては、サルコシルを用いた動力学的解析などから、PIC形成の安定化が考えられる。我々はさらに解析を進め、組み換え体TBPの代わりに精製したTFIID画分を用いた転写系を用いてもTIP120による転写活性化がみとめられること、TFIIHまで加えたより完全な再構成転写系でも、TIP120は線状DNAを鋳型とするAdML及びb-グロビンプロモーターからの転写を活性化することを明らかにした。これらの結果から、TIP120はプロモーター非依存的にPIC形成を安定化して転写を普遍的に活性化できる因子であると考えられた。
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