核内レセプターはDNA結合性の転写調節因子であり、リガンドの存在の有無により転写のスイッチをオンにしたりオフにしたり出来ることから、真核生物の転写機構を研究するのに適している。遺伝子の転写は、クロマチン構造の弛緩に始まる多くの段階を経て達成されるが、これには転写調節因子、基本転写因子群、コアクチベーター等、多くの因子が関与している。 核内レセプターを介する転写調節に関し、最近多くのコアクチベーターの関与が示唆されているが、その詳細な分子機構は不明である。そこで、我々は核内レセプターの一種であるビタミンDレセプター(VDR)について、これらコアクチベーターの転写活性化における役割について検討した。 これまでにクローニングされているコアクチベーターについて、培用細胞の系でVDRを介する転写活性化に対する効果を調べ、SRC1が促進的にRIP140が抑制的に働き、PCAFはSRC1の作用をさらに増強することを明らかにした。しかし、培養細胞では内因性のコアクチベーターが大量に発現しており、コアクチベーターの効果を正確に判定することが難しい。この問題を克服するためには、内在性の因子を完全に除いた状態で、コアクチベーターの転写活性化における役割を調べるなければならない。そこで今年度は、in vitroでのヌクレオソーム再構成系と培養細胞での遺伝子ノックアウト系の製作のための基礎検討を行った。
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