研究概要 |
遺伝子発現の調節において、「発現維持調節因子」という、新しい概念による細胞のメモリー機構の解明を目的としている。細胞がいかにして,決定(コミットメント)された状態を維持しているのかを遺伝子レベルで問い掛けることを主眼としている。 ポリコーム・グループ(PcG)遺伝子群は、クロマチン構造に作用し、いったん決定された遺伝子状態を維持していることが、主にDrosophilaの研究で明らかになってきた。そのメンバーはDrosophilaでも30〜40個存在すると考えられているが哺乳類ではまだ8個しか同定されていない。これらは細胞の多様な遺伝子発現制御のメモリー機構として作用しているが、今までは主にホメオボックス遺伝子群の制御がDrosophilaで研究されていたのみであった。最近、哺乳類のPcG遺伝子であるmel-18が直接c-mycを介して細胞周期を調節しているカスケードを発見した。さらにこのmel-18は、免疫グロブリンやリンパ球の抗原リセプターの遺伝子再構成、さらに細胞死(Apoptosis)をも制御していることが判明した。これらの遺伝子カスケードをトランスジェニクやノックアウトマウスを用いて解析・証明することを目的とした。 現在までに、mel-18遺伝子が、(1)in vitroで、がん抑制遺伝子としての活性を持つこと、(2)c-myc遺伝子の発現を調節することにより、c-myc/cdc25カスケードを介してCyclin-CDK複合体の活性を制御し、細胞周期を調節していること、(3)BCL-2ファミリーの発現調節を介して細胞死・細胞生存を制御していること、等を明らかにしてきており、さらに詳細な検討を現在行っている。
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