研究概要 |
本研究は、極微量のRNAの高次構造変化を追跡するためにRNAの特定部位に蛍光プローブや光化学反応性官能基等の「分子レポーター」を導入する方法の開発を目指している。今年度の成果は以下の通りである。 (1)分子整形術による「分子レポーター」導入のモデルRNAとして酵母tRNA^<Tyr>,tRNA^<Ile>およびtRNA^<Ala>を取り上げ、これらのtRNAを適切な「保護DNA断片」共存下に酵素で限定分解することによりD-ループ、アンチコドンループ、T-ループ内でそれぞれ切断されたRNA断片を効率よく調製する条件を確立した。 (2)RNAリガーゼ反応のドナー基質となり得るプローブ単量体として、独自にフルオレセイン化pCpやフルオレセイン化N^6-(6-アミノヘキシル)pAp等の調製法を開発し、また同様のモノマーps^4Upを東工大の関根光雄助教授から提供を受け、それらをアクセプターRNA断片に連結させる反応の至適条件を検討した。 (3)上記1.および2.の組み合わせにより、分子内の各所にフルオレセイン標識ヌクレオチドを組み込んだtRNAを各種作製した。 (4)フルオレセインで蛍光標識されたtRNAとタンパク質合成諸因子(ペプチド鎖伸長因子EF-Tuなど)との相互作用を蛍光偏光解消法を用いて測定するための基礎的研究を行った。アンチコドンループ2文字目をフルオレセイン化したtRNA^<Ala>をアラニル-tRNA合成酵素によりアミノアシル化し、さらにそれがEF-TuおよびGTPと三重複合体を形成する過程を蛍光偏光解消法により追跡することに成功した。今後この系を利用して、各種変異tRNAとタンパク質合成諸因子との相互作用を定量的に解析したい。
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