研究概要 |
本研究では、神経特異的RNA結合蛋白質であるHu蛋白質がPC12細胞の神経分化を誘導するという知見をもとにして、Hu蛋白質による細胞分化誘導機構の詳細を解明することを目的にし、マウスから分離したHu蛋白質であるmHuC,mHuD,Mel-N1の各蛋白質に相互作用する蛋白質や標的となるmRNAの同定を進めるとともに、それらに対するHu蛋白質の作用機序を分子レベルで明らかにすることを中心に研究を進めた。3種類のマウスHu蛋白質のそれぞれにT7エピトープのタグを付けた形でPC12細胞で発現させた後、細胞抽出液を調製し、各蛋白質を免疫沈降させ、共沈してくる蛋白質を同定した結果、興味深いことにHu蛋白質間でホモ、及びヘテロの蛋白質間相互作用があることが明らかになった。さらに、ゲルシフト法やUVクロスリンク法を用いたRNA結合能の解析を行った結果、神経突起の伸長機構において重要な分子とされるGAP-43や微小管の安定化に重要とされるtauのmRNA内に存在するAU-rich配列に、Hu蛋白質が特異的に結合することが明らかになった。また、GAP-43やTauのAU-rich配列をもつレポーター遺伝子の発現が、Hu蛋白質存在下で上昇することも明らかになった。これらの結果から、特異的mRNA分子の安定化、または翻訳の活性化を通じて、Hu蛋白質が神経突起伸長の過程に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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