研究概要 |
モータータンパク質のどのような化学状態の時にどのような力学状態が対応しているかを知るために,低温下で化学反応速度を低下させて,運動の解析を行なった.まず,レーザートラップされたビーズを緑レーザーで照明し,対物レンズの周りに,チューブを巻き付け,その中に,冷却水を流すことで,9℃まで冷却しでナノ計測できる装置を開発した.低温では,室温との温度差によるステージのドリフトが起こるので,長時間冷却を行い,温度の平衡状態に至った後に実験を開始した. さらに,低温により,発生する霜や水滴がステージや対物レンズ当に付着しないように,ステージ周辺部を乾燥させておいた.実験では,牛の脳より精製したキネシンを1μmのビーズに1個の割合で結合させ,このビーズをレーザートラップし,微小管と相互作用させた.相互作用しているキネシンを振動するために,レーザートラップの中心の位置を非対称に振動させた.このときのビーズの中心の位置を4分割光センサーでnm計測した.この装置を用いて,9℃におけるキネシンの運動を調べたところ,速度は25℃のときの5分の1に低下した.さらに,速度は温度低下とともに,指数関数的に減少することが確認された.驚いたことに,最大発生力は温度に依らず6pNとほとんど変化しなかった.この結果は,運動速度は化学反応速度と関係するが,発生力は反応速度と直接関係ないことが明らかにされた.今回の実験の問題点は,ノイズを十分に取ることはできず,キネシン8nmのステップを確認することができなかったことである.
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