我々はすでに抗体との反応性とK/EDTA-ATPase活性を指標としてTetrahymena pyriformisよりミオシンの精製に成功した。テトラヒメナ・ミオシンは分子量約22万の重鎖を持ち他の生物のミオシンより約40nm程長い尾部を持つ双頭の分子であること、K/EDTA-ATPase活性の値がウサギ骨格筋ミオシンよりも低い塩濃度で最大値を取ることなどユニークな性質を持つことが明かになった。しかし、テトラヒメナ・ミオシンを大量に精製することができなかったので、その実体を明らかにするため、テトラヒメナ・ミオシン遺伝子のクローニングを試みた。進化的に保存されたミオシン頭部の配列をプライマーとしてRTPCR法を試みた結果、すでにクローニングした3種類のミオシン遺伝子の他に新たに2種類のミオシン遺伝子が存在することを明らかにした。これら2つのミオシン遺伝子はT.thermophilaに存在するものであった。これら5種類のテトラヒメナ・ミオシンの部分アミノ酸配列と従来知られているミオシンのアミノ酸配列とを比較検討した結果、テトラヒメナ・ミオシン5種が他のミオシンサブグループと異なり新しいグループを作ることが明かになった。今後はこれら5種類のテトラヒメナ・ミオシン遺伝子の全塩基配列を決定し、その全体像を明かにする予定である。
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