研究概要 |
本プロジェクトはモータータンパク質であるミオシンが、ATPを加水分解してその化学エネルギーをアクチンと相互作用してどのように力学エネルギーに変換するかを明らかにする為、蛍光エネルギー移動測定によってミオシン上の特異的な2つの部位間の距離を測定し、それがミオシンの生理機能に対応してどのように距離を変化させるかを調べることによって、構造的な情報を得ることである。ミオシンS1の50KDaのlower domainにあり、又アクチン結合部位近くであるLys-533に蛍光エネルギー移動のエネルギー受容体となるFluorescein系の色素、6-[fluorescein-5(and6)-carboxamido]-hexanoic acid succinimidl ester(FHS)をつけ、一方その蛍光エネルギー供与体となるIAEDANSをSH1(Cysteine-707)に結合させたミオシンS1を調製した。蛍光エネルギー移動測定により、この距離を測定すると52-53Åであった。この距離はATPを加えても、又アクチンを加えても大きな変化は見られなかった。更にミオシンのATPaseサイクルの中間状態を保つことが報告されているATPアナログである、AMPPNP,Mg・ADP-aluminium fluorideを加えたが大きな距離変化は見られなかった。これは、ミオシンの構造変化は尾部領域では数十オングストロームの大きな構造変化があるが、頭部先端領域では大きな変化がみられないという結晶構造解析の結果とよく一致している。今後はアクチンとミオシンとの相互作用を、それらの多くの部位間の距離測定から多面的に調べて、ミオシンモーターのアクチン上での動きを明らかにしていきたい。
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