本年度の研究実施計画に記載した2点について以下のように実施した. (1) 損傷舌下神経cDNAライブラリーを用いたランダムクローニングによる遺伝探索1000匹のラットの損傷舌下神経核を回収し作成したcDNAライブラリーを用いて、ランダムに750クローンをとりだし、それらにつて部分塩基配列を決定した.これらのうち約100クローンについては、片側の舌下神経核を損傷した組織切片を用いてin situハイブリダイゼイションを行った.その結果約25%のクローンにおいて、mRNAの増加を確認した.この割合は極めて高いもので、本方法が損傷関連遺伝子探索に極めて有効であることを示している。本結果はMol.Brain Res.に発表すると同時に、得られたクローンのうちNOSの活性を上昇させることによりNO産生を促進するDDAHと呼ばれる酵素に関しては、その発現動態を詳細に検討しEur.J.Neurosci.誌に投稿受理されている(印刷中). (2) アデノウイルスベクターによる損傷神経への選択的遺伝子導入法の確立と応用アデノウイルスに神経再生関連分子のGDNF、GFRa-1、MEK及びPKBなとの遺伝子を導入し、予め培養細胞系で発現することを確認の後、ラットの舌下神経核に導入を試みた.動物での遺伝子発現は培養系に比べると低いものの、実際に発現していることは確認された.本遺伝子の導入による神経生存や再生に及ぼす影響については現在検討中である.
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