研究概要 |
平成10年度はまず12症例の神経芽腫群腫瘍(神経芽腫 7例,神経節芽腫 4例,神経節腫 1例)におけるポリシアル酸の発現パターンをポリシアル酸に対する特異抗体,12F8を用いて免疫組織学的に解析し,ポリシアル酸は神経節腫や神経節芽腫にくらべ悪性度の高い神経芽腫で強く発現していることを明らかにした.次に神経芽細胞腫培養細胞,SK-N-SHで発現するポリシアル酸は2種類のポリシアル酸合成酵素,PSTとSTXによって合成されていることをRT-PCR法により明らかにした.さらに,ポリシアル酸の発現レベルと神経芽腫の悪性度との相関を実験的転移アッセイにより解析するため,SK-N-SHにPST cDNAとSTX,cDNAを導入することでポリシアル酸をより強く発現する安定樹立株の単離を試みたが不成功に終わった.そこで,ポリシアル酸,N-CAMのいずれも発現していない低転移性マウス悪性黒色腫細胞,B16-F0にポリシアル酸転移酵素(PST,STX)cDNAとN-CAM cDNAを同時に,あるいはN-CAM cDNAのみを導入してポリシアル化N-CAMやN-CAMを発現するB16-F0を樹立し,これらの遺伝子導入細胞をC57BL/6マウスの皮下に注入して造腫瘍能の検討を行った.その結果,造腫瘍能は確認できたものの,ポリシアル化N-CAMやN-CAMの発現レベルはマウスの皮下組織内では著しく低下しており,これらの細胞を用いて実験的転移アッセイを行うことは困難となった.現在,マウスに注入してもポリシアル酸の発現レベルが低下しないような新たな遺伝子導入株を作製しており,今後はこれらの細胞を用いて実験的転移アッセイを行う予定である.
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