l 細胞接着・細胞膜裏打ちに機能するERMファミリー分子(エズリン、ラディキシン、モエシン(ERM))蛋白質の構造解析と、細胞内シグナル伝達における制御機構。 及び、新規神経特異的アクチン結合蛋白質Clinpin Cを中心とした、WD40ドメインの生理学的機能解析と3次元構造解析。 ERM分子群はリン酸化、脱リン酸化状態で構造変化を取り、また、様々な細胞内シグナル伝達分子と結合し機能している。このうち特にラディキシンの全長、及びドメインのバキュロウィルスによる発現系に成功しており、その電子顕微鏡観察による構造解析を進めつつある。 また、この過程で新規アクチン結合蛋白質Clipin Cを同定できた。この分子は、神経特異的な、アクチン結合蛋白でその組織・細胞内分布と結合分子の同定を行った。結果、神経の軸策伸長、神経細胞移動に関わり、さらには細胞内小胞輸送にも関わる可能性を示唆できた。この分子内に存在するWD40ドメインは、従来、G蛋白質や様々な分子内に見られ分子間結合に関与する領域として知られるが、実際にClipin Cでも細胞基質間接着裏打ち分子のVinculinやsmall G蛋白質標的分子との結合が見られることを示した。このWD40領域を中心とした構造解析を進めるための大量発現系を構築した。 2 Mab21分子の分子機能と構造化学的解析。 我々が新たに同定したマウスMab21分子は、Hox転写因子の制御下で形態形成に関与する分子であると考えられ、実際、線虫において生殖感覚器形成に関与することが遺伝的に示されてきた。しかし、その分子機能は不明である上に、既知の分子群との相同性も全くみられない。今年度、この分子の詳細な組織局在と核移行のメカニズム及びその機能領域に関して解析を行った。また、構造解析のためのバキュロウイルスによる発現系に成功するとともに、この分子でカイコ多角体病ウイルスによる更なる発現系(3)を確立することができた。 3 構造解析のためのカイコ多角体病ウイルスを用いた多量発現系の確立。 主としてMab21を用いて、バキュロウイルス系よりも強力なカイコ多角体病ウイルス(BmNPV)による蛋白質多量発現系を確立した。さらにAcMNPVプロモーター系への改良により、さらに効率の良いMab21蛋白質の多量発現に成功するとともに、ClipinCのWD40ドメインのような発現が困難であった分子の多量発現にも成功した。
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