Eps15は分子量約150KのEGF受容体の基質である。Eps15のN末端側にはEH(Eps15 ホモロジー)ドメインと呼ばれる構造が認められる。EHドメインを含む蛋白質が哺乳動物から酵母まで保存され、エンドサイトーシスを制御することは決定的になっている。EHドメインはAsn-Pro-Phe(NPF)というモチーフに結合するので、EHドメインを含む蛋白質とNPFモチーフを含む蛋白質の相互作用がエンドサイトーシスを制御する機構を明らかにすることは本研究領域の重要課題となっている。私共は低分子量G蛋白質Rasの標的蛋白質RalGDSを介する細胞内情報伝達機構の生理的役割を解明してきた。RasのシグナルはRalGDSを介してRalやその標的蛋白質RalBP1に伝えられる。私共はRalBP1と結合する新規蛋白質POB1(Partner of RalBP1)を同定した。POB1には、EHドメインが一個所認められ、培養細胞にPOB1のEHドメインを発現するとEGFやインスリン受容体のエンドサイトーシスが抑制されたので、POB1はこれら受容体のエンドサイトーシスに関与すると考えられた。POB1のEHドメインの機能を明らかにするために、ウシ大脳膜画分からPOB1のEHドメインと結合する2種類の蛋白質を精製したところ、これらは各々Eps15とepsinであった。epsinにはC末端にNPFモチーフが3個所認められた。POB1のEHドメインとEps15のEHドメインはepsinのNPFモチーフを含むC末端部分に結合し、POB1のEHドメインはEps15とも直接結合した。培養細胞にepsinの中央部領域を発現させると、EGFやインスリン受容体のエンドサイトーシスが抑制された。したがって、Ras/RalGDS/Ral/RalBP1/POB1シグナル伝達系はEps15やepsinを介してエンドサイトーシスに関与することが示唆された。
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