転写コアクチベーターMBF1のTBPと相互作用する部位を同定するため、分子の表面に出ているアミノ酸残基21ヶ所をそれぞれアラニンに置換した変異体を作成した。そして、酵母GCN4によって誘導されるHIS3遺伝子の産物の阻害剤であるアミノトリアゾールに対する感受性を指標にして、アラニンに置換したMBF1変異体の活性を調らべた。その結果、3ヶ所の変異体、R89A(D70Nの変異も生じていた)、T108A、D112Aと、double変異体T108A/D112Aが、TBPと相互作用する部位である可能性が示唆された。GSTプルダウンアッセイを行なったところ、R89A、D112A、T108A/D112Aは、TBPとの結合能が低下していた。以上のことから、MBF1による転写活性化には、TBPとの直接の相互作用が重要で、その相互作用にMBF1のC末端部分の3番目のαヘリックスが少なくともかかわると考えられた。 コアクチベーターMBF2は、カイコでしか見いだされておらず、同じ昆虫であるショウジョウバエですらカウンターパートは、見つかっていない。そこで、まずカイコの近縁種であるクワコとエリ蚕からホモログをクローニングした。クワコおよびエリ蚕MBF2の転写活性化能をAd2MLPプロモーターをテンプレートとしてin vitro転写系を用いて調べたところ、カイコMBF2と同様の活性化能を有しており、クローン化した遺伝子はMBF2であると結論した。一次構造を明らかにし、カイコMBF2と比較したところ、クワコMBF2は、97%のホモロジーを有していたが、エリ蚕MBF2は、極めて近縁種であるにもかかわらず、全体のホモロジーは、約50%で、4ヶ所にわかれて比較的保存された領域が存在した。以上のことから、MBF2は、特定の機能領域を除いて種間でかなり異なる領域のある因子であると考えられた。
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