研究概要 |
平成10年度に成立した本領域研究では、柱1.HIV-1の複製における宿主側因子、柱2.HIV感染症の病態と免疫、柱3.エイズの予防、制御、の各研究課題についてエイズ制御に向けた基礎研究を推進してきた。本年度(平成12年度)は、HIVの生活環に関しては、置換キメラウイルスを用いてHIV感染におけるV3領域と細胞膜分子との結合の重要性、HIVの転写機構における新しいNF-κB抑制因子RAIの発見、転写活性化における脱メチル化の役割、Vprの新しいアポトーシス誘導機構が明らかになった。感染病態については、日本人におけるRANTES,CCR5,IL4,IL16遺伝子多型と病状進行との相関、HIV感染SCIDマウスのCD4陽性T細胞のアポトーシスにおけるTRAILの関与が示された。免疫学的研究では、HIV感染者における多数の抗HIVCTLエピトープの同定とCTLの動態、膜融合リポソームを用いた経鼻免疫のマウスにおける有効性が示された。昨年度のCXCR-4、CCR-5を標的としたわが国独自の低分子感染阻害剤(T22,T140,TAK779)の開発に続き、本年度も異なる作用点を有するいくつかの魅力ある新しい抗HIV物質、即ち、gp120の糖鎖に結合し感染を阻害するアクチノヒビン、HIVの侵入から逆転写までを阻害する新規薬剤Y664、HIV転写抑制物質K37、強力な抗HIV活性を持ち、耐性変異の異なる新規プロテアーゼ阻害剤UIC-94003などが見つかった。総括班では、これら研究の推進のため、2回の班会議の開催、研究者間の情報と試料の交換促進のためのニュースレターの発行、海外への研究者の派遣などを行った。また、ヒトゲノムプロジェクトの成果をエイズ研究にどのように取り入れていくかを、作業グループを設けて検討した。
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