研究概要 |
HIV-1産物と宿主T細胞因子との相互作用は、HIV-1の感染・複製およびそれに伴う病態を理解する上で重要である。我々はHIV-1産物のうちNefおよびEnv蛋白と宿主因子の相互作用に関して研究を進めており、Nef結合因子としてアシルCoAチオエステラーゼ-III(ACTE-III)を、またEnv結合因子としてはAP-2複合体μ鎖を同定した。 ACTE-IIIはアシルCoAからアシル基を遊離させる活性を持ち、Nefの存在下でその酵素活性が増大することがわかった。T細胞にはアシル化蛋白質としてLckやFynなどのSrcファミリーチロシンキナーゼが発現しており、T細胞のシグナル伝達に重要な役割を果たしている。そこでACTE-IIIがLck/Fynのパルミトイル基をも基質とするか検討した.その結果,これらの蛋白質のパルミトイル基はACTE-IIIにより切断されることがわかった。したがって、Nefによる細胞内小器官膜の構造異常や免疫抑制は、ACTE-IIIを介して起こっている可能性が示唆された。 また、Yeast2-hybrid法を用いて新たなNef結合蛋白質を検索した結果、taranslation ini-tiation factor-3のサブユニットおよびHsp40が得られた。Nefとこれらの相互作用にどのような意義があるかにつては今後の課題である。
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