我々はこれまでにRNA-タンパク質相互作用を細胞内で検出する系を開発した。この系を用いて、HIVの複製において重要な役割を果すRev-response element(RRE)に結合する新規ペプチドをコンビナトリアル・ライブラリーから遺伝的に同定することができた。さらに、これらのペプチドがRREの結合相手であるRevタンパク質による、RREを持つRNAの核外輸送を阻害することを明らかにした。このことから、特定のRNAを標的とするペプチドを用いることにより、HIV複製をさまざまなステップで制御できることが示唆された。しかし、現在のところ、このスクリーニング法を用いてRREと結合するペプチドの同定にしか成功していない。 本研究期間は、多様なRNAと結合するペプチドの同定が可能となるよう、ふたつの改良を行ってきた。まず、上述の実験系を用いてより多くの配列が検索できるよう、レポーター遺伝子であるLacZの代りにカナマイシン耐性遺伝子(NPTII)を挿入した。種々のRNAとポリペプチドを用いた実験の結果、LacZレポーターで見られた活性と対応するカナマイシン耐性が得られた。これによって、原理的には10^8〜10^9の配列からの「セレクション」が可能となった。次に、ライブラリーのデザイン法の改良を行った。アルギニンを豊富に含むペプチドがRNAとの特異的な結合に優れている点に注目して、ポリアルギニンに高い割合いで変異を導入したライブラリーを作製した。現在、このライブラリーの質をテストする意味で、まずRRE結合ペプチドのスクリーニングをはじめている。
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