HIV逆転写酵素のRNase Hドメイン(HIV-RT RNase H)に対する阻害剤はAIDSの治療薬として実用化されていないが、副作用の少ない新しいタイプの治療薬となる可能性を秘めている。このような阻害剤の開発を目指して、HIV-RT RNase Hに非常に類似した三次構造をもつ大腸菌RNaseHIをターゲットとして用い、ランダムな配列をもつライブラリーの中からRNase H活性を阻害するペプチドやRNAの探索を行うことを目的とした。まず、ランダムなペプチド配列をディスプレイしたファージライブラリーを用い、RNase HIを固定化した磁気ビーズに結合するファージのセレクションを行った。セレクションを4回繰り返すことによりRNase HIに特異的に結合するファージを得ることができた。また、このファージのRNase HIへの結合は基質であるpoly(rA/dT)により阻害されたので、このファージはRNase HIの基質結合部位に特異的に結合することが示唆される。このファージにディスプレイされている配列の合成ペプチドは、0.6mM以上の濃度において、RNasc H活性や、このファージのRNase HIへの結合を阻害した。さらに、ターゲットとの親和性の高いペプチドが得られやすいと考えられている、環状ペプチドをディスプレイしたファージライブラリーを用いてセレクションを行った。4回のセレクションによりRNase HIに特異的に結合するファージが得られたので、ディスプレイされている配列の合成ペプチドを作成し、阻害活性を調べる予定である。また、40残基のランダムな配列をもつRNAライブラリーの作製も行っており、RNase HIに結合するRNA配列のセレクションも現在進めている。
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