Heha細胞からLAI株のHIVに感染するP6HeLa細胞と感染しないN7HeLa細胞をクローニングした。この感染感受性P6HeLa細胞はCD4分子とガラクトシールセラマイドは陰性、CXCR4陽性であった。そこでP6HeLa細胞のHIV感染機構を、CD4陽性のHeLa細胞であるCD4HeLa細胞と比較し調べた。P6HeLa細胞にHIVを感染させると、CD4HeLa細胞と同程度のHIV陽性細胞数の増加が見られた。しかし、感染P6HeLa細胞ではCD4HeLa細胞で見られるような細胞融合現象は認められなかった。P6HeLa細胞の感染にはCD以外の因子が関与していると考えられ、P6HeLa細胞を免疫し細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体を作製した。P6HeLa細胞のHIV感染を抑制するA14ITKとC57a9-9抗体を得たが、A14ITKはさまざまなヒト細胞株の47と51kDaの蛋白と反応した。一方、C57a9-9抗体はP6HeLa細胞と特異的に反応し、100kDaを中心とした幅広い蛋白を認識した。P6HeLa細胞ではHIVの持続感染産生細胞であるMOLT-4/HIV細胞と混合培養すると、ウイルスが接触面の反対側に通過するトランスサイトーシスの現象が認められた。このトランスサイトーシス活性はコルヒチンで抑制され、AZTでは阻害されなかった。またC57a9-9抗体はこの現象を抑制した。C57a9-9抗体が認識する分子は、P6HeLa細胞の系では、HIVの感染とトランスサイトーシスに関与していると思われた。
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