HIV-1の活性化CD4+T細胞における増殖性および病原性を左右する宿主因子の一つとして、CD4+T細胞上のHIV-1第二受容体の発現制御が考えられる。これらの受容体の中で重要なものは、CCR5とCXCR4であり、より詳しい抗原構造の解析やin vivoでのウイルス中和実験に用いるため、それぞれの抗原に対して特異的なラット由来単クロン抗体の作製に成功した。CCR5に対する抗体T-227は、細胞外部N末領域を認識しWBにおいて40-41kDaのCCR5抗原分子を検出した。CXCR4に対する抗体は、細胞外部N末領域を認識する抗体(A145)と、細胞外部2ndloopを含む領域を認識認する抗体(A80)が作製できた。以上の特異的単クロン抗体と市販のマウス単クロン抗体を用いて、CD4+T細胞の多重染色を行い、freshな細胞にはCXCR4が多量に発現されるが、CCR5は陰性であることが確認された。刺激によってCCR5の発現が誘導されてくるが、CXCR4は、培養期間が長くなるにつれてその発現量は減少していった。特にCD4+Tクロンでは、CCR5陽性、CXCR4弱陽性の表現形のものが多かった。これらのクロン細胞は、マクロファージ親和性HIV-1に高い感受性を示したが、T細胞株親和性HIV-1には耐性か低い感受性であった。ところが、このT細胞を刺激することによってCCR5のdown-modulationとCXCR4のup-regulationが観察され、同時にこれらのクロン細胞は、T細胞株親和性HIV-1に高い感受性を示し、マクロファージ親和性HIV-1低い感受性を示すようになった。つまり、メモリー細胞と活性化早期細胞では、CCR5とCXCR4の発現は異なり、それぞれの発現量に比例してマクロファージ親和性HIV-1とT細胞株親和性HIV-1に対する感受性も異なることが示唆された(論文作成中)。
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