CC型ケモカイン類の一つであるRANTESは、T-リンパ球を含む種々の白血球の遊走化及び活性化因子として知られている。最近、RANTESは、MIP-1αおよびMIP-1βとともに、マクロファージ指向性HIV-1のコレセプターであるCCR5との相互作用を介して強力な抗HIV-1作用発現することが明らかにされた。また、CCR-5のアンタゴニストであるRANTES9ー68やAOP-RANTESも強力な抗HIV活性を有することが報告された。これらのことから、HIV-1のコレセプターであるケモカイン受容体を標的とする新しいタイプのエイズ治療薬の開発が注目されている。我々は、RANTESアミノ末端部のアミノ酸配列をもとに低分子量の抗HIV-1ペプチド、Ac-(^<10>Ala-RANTES1ー10)NH_2(1)を見いだした。本年度は、1)このペプチドの短鎖誘導体の合成、2)系統的アミノ酸置換の導入、3)アミノ末端部以外の活性部位の探索を行い、以下のような成果を得た。 1. ペプチド1の短鎖誘導体を合成し、それらの抗HIV活性を検討した結果、さらに低分子量の抗HIV-1ペプチド、Ac-(^<10>Ala-RANTES6ー10)-NH_2(2)を見いだした。また、その結果を基にケモカイン類のアミノ酸配列を比較し、抗HIV-1活性を有するCC-ケモカインに特有のアミノ酸配列を見いだした。 2. ペプチド1および2の構成アミノ酸を系統的に置換した誘導体を合成した。抗HIV-l活性については現在検討中である。 3. RANTESの部分アミノ酸配列を持つペプチド15種を合成し、ペプチド1以外に抗HIV-1ペプチド3種を見いだした。
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