転写調節による造血分化制御

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10181102
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 仲野 徹 大阪大学, 微生病物研究所, 教授 (00172370)
• 研究分担者: 田中 信之 東京大学, 医学部, 助教授 (80222115) ; 小守 寿文 大阪大学, 医学部, 助手 (00252677) ; 平井 久丸 東京大学, 医学部, 助教授 (90181130) ; 北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520) ; 山本 雅之 筑波大学, TARAセンター, 教授 (50166823)
• キーワード: 造血幹細胞 / 転写因子 / 細胞分化 / 赤血球 / 白血球 / 白血病

研究概要

造血細胞分化に関与する遺伝子群の機能について、造血に関与する転写因子の調節を中心に解析を行った。仲野は、巨核球・赤血球の振り分け機構を明らかにするために、巨核球特異的遺伝子発現をモデルに、ES細胞からのin vitro分化誘導とレポーター遺伝子を組み合わせた解析系を構築した。この方法は血液細胞における遺伝子発現を解析する上において有用な方法になると期待できる。山本は、赤血球特異的な転写因子であるGATA-1の機能解析を、GATA-1ノックダウンES細胞を用いてES細胞からの分化誘導法により行った。また、そのノックダウンの巨核球の増殖・分化における役割を検討した。これらの実験から、GATA-1遺伝子の機能の新しい側面が明らかになった。北村はmi転写因子の機能解析を行うと同時に、ストロマ細胞の腫瘍においてc-kit遺伝子の突然変異か重要な役割をはたしていることを明らかにした。平井は、白血病の染色体転座部位からクローニングされたEvi-1遺伝子の白血病発症に
おける役割の解析を行い、Evi-1遺伝子がSmad3を介してTGF-βのシグナル伝達を抑制することを明らかにした。また、Evi-1遺伝子のjUNKシグナル伝達経路における機能の解析を行っている。小守は、多彩な染色体転座を示す遺伝子であるMII遺伝子のノックアウトマウスの解析を行い、MII遺伝子が胎仔肝における造血に必須であることを示した。また、田中はインターフェロン遺伝子発現の調節機構の解析を継続して行っており、ほぼ全容を解明した。

研究成果

• [文献書誌] Kurokawa M,Mitani K,Hirai H,et al: "The oncoprotein Evi-1 represses TGF-beta signalling by inhibiting Smad3" Nature. 394. 92-96 (1998)
• [文献書誌] Hirota S,Isozaki K,Kitamura Y,et al: "Gain-of-function mutations of c-kit in human gastrointestinal stromal tumors" Science. 279. 577-580 (1998)
• [文献書誌] Suwabe N,Takahashi S,Nakano T.et al: "GATA-1 regulates growth and differentiation of definitive erythroid lineage cells during in vitro ES cell differentiation" Blood. 92. 4108-4118 (1998)
• [文献書誌] Takahashi S,Komeno T,Yamamoto M.et al: "Role of GATA-1 in proliferation and differentiation of definitive erythroid and megakaryocytic cells in vivo" Blood. 92. 434-442 (1998)
• [文献書誌] Yagi H,Deguchi K,Komori T.et al: "Growth disturbance in fetal liver hematopoiesis of Mll-mutant mice" Blood. 92. 108-117 (1998)
• [文献書誌] Tanaka N,Sato M,Taniguchi T.et al: "Type l interferons are essential mediators of apoptotic death in virally infected cells" Genes Cells. 3. 29-37 (1998)