我々は、植物RNAウイルスの一つであるキュウリモザイクウイルス(CMV)の増殖に関与する宿主因子同定のため、CMVの細胞間移行の効率が低下するシロイヌナズナcum1変異株を単離した。本年度はまず、cum1-1変異がプラスモデスマータの形態あるいは機能に影響を与える可能性を考慮して、植物体を構成する細胞、組織の形態、あるいはプラスモデスマータ周辺の細胞内構造の形態をcum1-1変異株と野生型株で比較したが、顕著な差は見られなかった。また葉肉細胞にマイクロインジェクションした蛍光高分子量デキストランの隣接細胞への拡散の観察からcum1-1変異株と野生型株の間でsize exclusion limitに差があるか検討したが、現在のところ差は見られていない。次に、CUM1遺伝子座のクローン化を試みた。ファインマッピングにより、cum1変異の存在しうる範囲をシロイヌナズナ第4染色体下部に位置するDNAマーカーmi32を含む約100kbの領域内に限定し、この領域のほぼ全体を、T-DNAベクターにクローン化された野生型ゲノミックDNA断片群でカバーした。さらに各クローンでcum1-1植物を形質転換し、形質転換体を得た(ただし、少数のクローンいくつかを除く)。T2植物を用いてCMVの増殖効率を調べたところ、結果は未だ予備的ながら1つのクローンに由来する形質転換体でcum1変異株より高いCMV外被蛋白質の蓄積がみられた。現在、トランスジーンとcum1変異の相補が共分離するかなど結果の正当性をテストする実験を行っている。この結果が真であれば、マッピングの結果とあわせてCUM1遺伝子の存在しうる領域は約30kbpに限定されたことになる。
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