胚発生で分化した茎頂分裂組織が発芽後も維持される機構に迫るために、茎頂分裂組織の維持に関わる変異体を得る目的でスクリーニングを行い、発芽後約1週間で枯死するものが約10系統得られた。その中には、茎頂分裂組織が葉原基分化により消費され、発芽後約1週間で消失するものや、茎頂分裂組織の層構造が崩壊するものがあった。これらの変異体には茎頂分裂組織の維持に重要な遺伝子が関わっていると考えられる。 pla1変異体は、栄養生長期(adult phase)において葉原基を野生型の約2倍の速度で分化するものとして同定された。pla1は、野生型と同じ時期に止め葉を分化したが、その後は穂を分化せず多くのシュートをラセン生で分化した。茎頂付近を詳細に観察した結果、この表現型は、穂の基部の1次枝梗原基がシュートに転換した結果であることがわかった。このシュートは、その後止め葉の分化と1次枝梗原基のシュートへの転換を繰り返した。従って、pla1は、生殖生長期でも栄養生長期のプログラムが終了せず機能しているヘテロクロニー変異体である。 葉原基の分化様式で興味ある現象の1つである葉序について2つの変異体を同定した。1つはjuvenile phaseでランダムな葉序を示すsho変異体であり、この変異体では茎頂分裂組織の形が異常になり、茎頂分裂組織における細胞分裂が高頻度で起こっていた。興味深いことにshoの葉では領域の分化が異常になっていることが明らかになった。茎頂分裂組織の異常が葉領域分化にも影響すると考えられる。もう1つの変異体decはjuvenile phaseで十字対生を示す。decの茎頂分裂組織は野生型より大きくなっており、茎頂分裂組織のサイズや形が葉原基の分化位置に大きく影響することが明らかである。また、decの葉では葉身一葉鞘の境界が規則的にずれており、葉身一葉鞘の分化が1つ前の葉原基(の位置)によって影響されると考えられる。
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