低次元ヘリウム3の新物性

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10203101
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 奥田 雄一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50135670)
• 研究分担者: 石本 英彦 東京大学, 物性研究所, 教授 (60044773) ; 和田 信雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90142687) ; 河野 公俊 東京大学, 物性研究所, 助教授 (30153480) ; 家 泰弘 東京大学, 物性研究所, 教授 (30125984) ; 福山 秀敏 東京大学, 理学系研究科, 教授 (10004441)
• キーワード: 超流動3He / 自由表面 / 超流動3He薄膜 / 第3音波 / 低次元液体3He / 2次元3Heの磁性 / 金属・絶縁体転移 / 多体交換相互作用

研究概要

ヘリウム3は顕著な量子効果を示す強相関フェルミ粒子系であり、単純な系であるにも関わらず超流動や磁性などに驚くべき多彩な現象を示し、多くの豊かな物理を提供している。本研究領域では、この強相関フェルミ粒子系であるヘリウム3に低次元性という制限を導入することによって、バルクなヘリウム3では実現不可能であった様々な新しい実験条件を作り出し、新しい物理現象を発見・探求することを研究の目的とする。
本課題は、この領域の総括班としての活動を目的としたものである。総括班会議を数回開催し、領域の研究を推進すべく領域内の各計画研究間の連絡、連携の計画を検討した。
また、総括班としての最大の仕事である研究会を企画し、平成11年1月29日〜31日の3日間、伊豆高原で領域の第一回目の研究会を開催した。上記の計画研究の発表を中心に関連分野の発表を含め、合計44件の発表が行われた。また、一日平均約90名という若い研究者も含んだ多くの参加者のもとで盛大に行われた。本計画研究の個々のテーマを中心にして、関連の興味深いテーマを含めて十分に時間をかけて議論されたものと思われる。さらに2次元電子系のトピックスを家泰弘氏に、中性原子Rb87のレーザー冷却によるBECの話題を上妻幹男氏に提供していただき、研究会を盛り上げてもらった。また、家泰弘、水崎隆雄、福山寛の各氏を評価委員として招待し、領域のご批評を頂いた。
この研究会を通して各計画研究は順調にスタートしていることが確認され、さらに追究されるべき問題点が明確に絞られたものと思われる。今後も、このようなスタイルの研究会を中心として、領域の研究に推進を有効に進めたいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] A. Sawada, Z.F. Ezawa, H. Ohno, Y. Horikoshi, A. Urayama, Y. Ohno, S. Kishimoto, F. Matsukura and N. Kumada: "1. Interlayer Coherence in the ν-1 and ν=2 Bilayer Quantum Hall States :"Phys. Rev.. B59. 14888-14891 (1999)
• [文献書誌] T. Okamoto, K. Hosoya, S. Kawaji and A. Yagi: "Spin Degree of Freedom in a Two-Dimensional Electron Liquid"Phys. Rev. Lett.. 82. 3875-3878 (1999)
• [文献書誌] H. Yano, T. Jocha, and N. Wada: "Vortex dynamic study of frequency dependence of superfluid onset temperature"Phys. Rev.. B60. 543-549 (1999)
• [文献書誌] H. Kawashima, K. Shirahama, and K. Kono: "Fluctuation Properties of Third Sound Transmission in Random Media"Physica B. B263-264. 373-375 (1999)
• [文献書誌] K. Matsumoto, S. Hasegawa, M. Suzuki, Y. Okuda: "Surface Tension Maximum of Liquid 3He"Physica B to be Published. (published). (2000)