研究概要 |
2次元電子系の示す量子ホール状態は、非対角長距離秩序状態を表すラフリンの波動関数によって記述できることが知られている。複合ボソンモデルに立脚すると量子ホール状態を非圧縮性のボーズ凝縮状態とみなすことができる。一方これまでの我々の実験によって、2層系量子ホール状態ν=1および低電子密度のν=2においては、密度差の自由度が存在し、量子ホール状態がボーズ凝縮状態であれば、層間マクロ・コヒーレンスの存在が期待できることを明らかにした。今年度はさらに移動度の大きな良質の試料を製作できるようにし、新しい量子ホール状態を探す研究と独立2層量子ホール状態の励起ギャップを求める実験を行った。その結果2層系試料としては世界で最も移動度の高い試料の製作に成功した。その試料を用いた実験を行った結果、ν=1,2だけではなく、3,5,6などν=4N-3、4N-2、4N-1(Nは自然数)の一般的なランダウ準位充填率をもつ量子ホール状態に密度差の自由度の存在することが明らかになった。ν=4Nでは密度差の自由度の存在する量子ホール状態は存在しないことも明らかになった。また、励起エネルギーの測定を行い、独立2層量子ホール状態の励起ギャップには、層間の相互作用により、スピンを同時に14個反転する新しいスカーミオン励起が存在することが明らかになった。さらに磁場を増加すると7個、1個の反転数が不連続に変化する新しい現象を発見した。
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