研究課題/領域番号 |
10203205
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石本 英彦 東京大学, 物性研究所, 教授 (60044773)
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研究分担者 |
山口 明 東京大学, 物性研究所, 助手 (10302639)
柄木 良友 東京大学, 物性研究所, 助手 (30186027)
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キーワード | 量子流体 / 量子固体 / 超流動 / 多体交換相互作用 / 量子スピン系 / スピン液体 / 三角格子 / フラストレーション |
研究概要 |
グラフォイル基盤に吸着された数原子層以下のヘリウム3は、非常にきれいで理想的な2次元フェルミ系を形成し、吸着量を変えることにより液相と固相が同じ試料セルで実現出来る。このうち吸着第一層の固相はフラストレーションの大きな3角格子であるが、相互作用が非常に小さく約1mK程度までの測定では、その磁性は明らかではなかった。今回、我々は0.2mKまでのNMRによる磁化測定を行った。その結果、整合相の3x3相が強磁性的であり、吸着密度を増やすと狭い反強磁性的な領域を経て不整合相では再び強磁性的でその大きさはピークを持つことが判った。この結果は原子間の直接位置交換による強磁性的な多体交換相互作用と反強磁性的な多体交換相互作用の競合により説明される。原子間のハードコアポテンシャルのため、高密度では強磁性的な3体交換が優勢であるが、密度の低下とともに反強磁性的2体交換が相対的に強くなるのである。一方整合相の3x3相は基盤からの吸着ポテンシャルにより安定化されており、吸着ポテンシャルのサイトによる周期的変化を考慮する必要がある。3x3相のような低密度では、原子間のハードコアポテンシャルの効果は小さくなり吸着ポテンシャルによるトンネル障壁を無視できない。その結果強磁性的な3体交換が容易になると考えられる。こうして吸着第一層の固相の磁性は明らかになったが、最も興味ある反強磁性的な領域は狭く相互作用の大きさも小さい。そこでより大きな反強磁性的な相互作用を得るため、吸着基盤を固体HDで覆った固体ヘリウム3についての準備が行われた。そのためHDガスに微量に含まれるオルソ水素をパラ変換するシステムの製作やガス導入管の改良がなされ測定が始まろうとしている。
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