低次元とくに1次元2次元という空間的制限のなかにおかれたフェルミ粒子系では、朝永・ラッティンジャー液体という特異な状態になると考えられているが、その性質についていくつかの問題を研究し、新たな知見を得た。 具体的には、以下の点について調べた。 1)スピンに関する励起にギャップが生じるという特異な状態の場合に、グリーン関数のスペクトルやスピン・電荷応答関数などがどのように振舞うか調べた。その結果、今までと異なる相関指数の振舞いを見出した。 2)擬1次元のモデルに対して摂動計算を発展させ、純粋な1次元系の振舞いから2次元系での振舞いにクロスオーヴァーする様子を具体的に得た。 3)1次元フェルミ粒子系において密度波とスピン密度波の共存という興味深い可能性があるが、これについて共存のメカニズム、温度依存性などを調べた。とくに繰り込み群を用いて、相図上で2種類の共存状態があり、クロスオーヴァーによる状態の温度変化があることがわかった。 4)1次元系でのスピンと密度の分離を考慮して、2層ある場合の1次元フェルミ粒子系の基底状態を変分的な観点から調べた。その結果、2層目の密度に依存していくつかの興味ある磁気状態が実現することを見出した。さらに、フラストレーションの効果による密度波の融解という可能性を調べた。 5)擬1次元的なフェルミ粒子系では、ストライプ状態と呼ばれる電荷が縞状に局在して、スピン自由度の部分と1次元流体の部分とに分かれる可能性がある。このような状態について実現の条件などについて調べた。 6)1次元ボース粒子間に強い短距離斥力が働くというモデルを用いて、グリーン関数の振舞いなどを調べ、よく知られているフェルミ粒子系との類似点、相違点を明らかにした。
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