液体3Heの常流動相における表面張力の温度依存性が150mK以下の低温での測定は温度変化は非常に小さいことに加えて、100mK付近に小さいながら紛れもなくピークがあることがわかっている。今年度はこの説明をするために、フェルミ液体の専門である三沢教授の協力を得て、解析に努めた。その結果、以下のことが明らかになった。 1)液体^3He自由表面近傍で、密度が急激に変化しているところは、局所エントロピーの考えが成り立つとして不都合はない。 2)フェルミ縮退している領域で、表面張力の温度依存性を示す最初の項はT^2であるが、相反する効果のためその係数はほとんどゼロになる。温度依存性が100mK以下で極めて小さいことに対応している。 3)T^2の項が極めて小さいとその次の項が効いてくる。その次の項の関数形は強く相互作用する^3Heの磁気モデルに敏感になってくるが、ここでは三沢理論によって(nearly metaganetic modelに近い)T^41n(T/T^*)の項を取り入れた。T^*がフィッティングパラメータになるが、実験結果を見事に再現する事ができた。 4)表面張力の精密測定から、液体3Heの磁気モデルについての重要な指針が得られた。 その他、ゼロ音波による超流動3He表面での実験の準備が進み、来年度早々に実験に入れる体勢が整った。 さらに、本計画研究で購入された希釈冷凍機が順調に運転されることが確認され、本格実験がスタート出来ることになった。
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