研究概要 |
本研究では,単体的複体理論に基づいた離散システム論に対する統一的アプローチを確立することと,さらに関連した離散システム問題に対して実際にそれらを解くプロトタイプシステムを開発して,アルゴリズムデータベースの構築に高件することを目指している. 本年度の研究では,まず理論的に単体的複体の有する不変量の計算について,様々な離散システムへの応用も含めて検討した.単体的複体では,フェイスに関するfベクトルと,それを線形変換して得られるhベクトルという不変量が基本的である.hベクトルは,単体的複体のシェリングとも関係する.本年度の研究では,様々な離散システムの良さを記述するマトロイドを単体的複体としてみたとき,もとのマトロイドとその双対マトロイドのhベクトルを合わせたものとしてTutte多項式が得られることに基づき,マトロイド複体での不変量計算について成果を上げた.具体的には,マトロイド複体の場合は,独立集合族・基族をコンパクトに表現する構造として2分決定グラフに着目し,その組合せ複雑度の解析と,応用としてネットワーク信頼度・絡み目のブラケット多項式計算が中規模問題でも実際に解けることを示した. また,情報幾何での有限点集合の構成する離散構造について解析を行ない,単体的複体の典型例である凸多面体によってその離散幾何構造を明らかにした.具体的には,情報幾何の双対平坦空間でのダイバージェンスによる近接構造としてVoronoi図を定義・解析し,ポテンシャル関数を通じた共役性によってこの構造が凸多面体構造をなすことを示した.この場合の複体としての不変量計算については,引続き検討を進めている.
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