研究概要 |
従来,アルゴリズム理論の分野ではアルゴリズムの漸近的振る舞いに関心が集中し過ぎていた傾向があるので,本研究では工学的な視点から実際的な問題解決の方法の開発を目指して研究を行った.具体的には,印刷製版において重要な最適網点形状設計問題の他に,画像処理で重要な集合切り出しとクラスタリング問題について考察した.前者の問題では限られた図形内に指定された個数の点を最近点対間の距離が最大になるように配置することが求められるが,最近の研究によって,この問題を計算幾何学においてよく研究されているボロノイ図の概念を用いてうまく定式化できることが分かった.連続平面上での定式化を離散平面上に制限したとき,どのような幾何的性質が利用できるかを詳しく調べることにより,従来の手法とは全く異なる効率の良いアルゴリズムを開発することに成功した.成功の要因は従来のように一度決めた点の配置を固定するのではなく,最も広い領域の中央に現在の点を移動することによるメリットを計算幾何のデータ構造を用いて効率よく求めて,メリットを最大にするように点の配置を変化させることができるようになった点にある.網点形状設計問題の他にクラスタリング問題についても考察した.従来,データ検索というと一部の研究者に利用が限られていたと言っても過言でないが,インターネット時代に突入してデータ検索が日常業務として生活に入り込んできた.データ検索ではクラスタリングが重要な役割を果たしている.本研究では申請者らが先に画像処理用に開発したクラスタリングのアルゴリズムをデータ検索を視野において改良を行った.具体的には,画像の等高線表現を利用して画像の大局的な構造を表現し,これを割り当て問題に基づく距離関数と組み合わせることでクラスタリングを行うというものであり,実際の画像データに対して本研究で開発したプログラムを実験した結果,従来では区別が難しかったクラスの分離にも成功し,産業界からも高い評価を得た.
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