研究概要 |
本研究の目的は,2次元メッシュ状に√<N>x√<N>頂点を配したメッシュ網,もしくはそれに近い構造を持つ網を対象にして,従来標準的とされてきた無情報ラウティングの問題点を指摘し,適応化と確率化によってそれを解消すると共により良いラウティングアルゴリズムを開発することを目的とする.無情報ラウティングを採用した場合の問題点として,個々のパケットの移動経路を他のパケットの移動経路を考慮せずに決めてしまうため,多数のパケットがある一箇所に集中することにより非常に大きなラウティング時間を必要としてしまうことがあるということが指摘されていた. 本年度は,主に,各プロセッサが一度に保持できるパケットの数,つまりキューの大きさが定数に限定されているメッシュ網に対する無情報ラウティングに関する研究を行った.メッシュ網の直径は2√<N>であるにも関わらず,これまでに知られていた上限はO(N)時間であり,この上限を改良できるかどうかは長い間未解決のまま残っていた.しかし,1998年のESAにおいて上限をO(N^<0.75>)時間まで改良可能であることを発表した.さらに,1999年のSODAにおいてこのO(N^<0.75>)時間の上限がO(√<N>)時間まで高速化できることを示した.本研究で提案したアルゴリズムは,無情報条件のもとで,2次元メッシュ網の直径と同程度のラウティング時間を実現した最初のアルゴリズムであるが,移動経路が最短ではなく,定数係数が非常に大きなものになっているという問題が残っている.適応化と確率化によりこれらの問題を解消することについては平成11年度以降の課題としたい.また,より一般的な結合網への拡張を行っていく予定である.
|