研究概要 |
離散構造を有するシステムの最適化問題が容易に解けるか否かは,その対象となるシステムの構造に強く依存する.比較的容易に解ける問題の離散構造としては,劣モジュラ関数が深く関係することが知られている.劣モジュラ関数とは,有限集合の部分集合全体の上で定義された関数であり,任意の部分集合の組X,Yに対して, f(X)+f(Y)≧f(X∪Y)+f(X∩Y) を満たすものを意味する.劣モジュラ関数は,凸関数の離散版と見なすことができるため,その最小化が離散最適化における基本的な問題と考えられてきた.線型計画法に対する最初の多項式時間アルゴリズムである楕円体法を用いて,劣モジュラ関数の最小化も多項式時間でできることがGrotschel,Lovasz,Schrijver(1981)によって明らかにされていた.しかし,楕円体法は,収束が極めて遅く,実際上は効率的なアルゴリズムとは言いがたい.本年度の研究では,組合せ的な手法による多項式時間アルゴリズムの開発を行った. このほかに,行列束の構造指数を求める組合せ緩和法に関する研究,知識獲得問題に対して論理関数を用いた研究,ネットワーク上の離散最適化問題に関する逆問題の研究を行った.
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