高度な信頼性を有する大規模分散システム構築のための分散アルゴリズムに関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10205218
• 研究機関: 奈良先端科学技術大学院大学
• 研究代表者: 増澤 利光 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教授 (50199692)
• 研究分担者: 藤原 暁宏 九州工業大学, 情報工学部, 講師 (10295008) ; 片山 喜章 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学センター, 助手 (10263435) ; 井上 美智子 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助手 (30273840)
• キーワード: 分散アルゴリズム / プロトコル / 並列アルゴリズム / 故障耐性 / 無待機 / 自己安定

研究概要

本研究では,高度な信頼性を有する大規模分散システムを実現するための基礎技術としての分散アルゴリズムの設計・開発を目指す。具体的には、分散システムにおいて、高度な信頼性の実現に有望であると考えられる無待機分散アルゴリズム(停止故障に対する高度な故障耐性を有する)、自己安定分散アルゴリズム(一時故障に対する高度な故障耐性を有する)についで主に研究する。
本年度は、時計合わせ問題、k-相互排除問題という分散システムの実現にとって基本的で重要な問題を取り上げ、無待機性と自己安定性の両方を実現する分散アルゴリズムを設計した。これにより、無待機分散アルゴリズム、自己安定分散アルゴリズムという2つの設計パラダイムの融合の可能性を示すとともに、そのための基本的手法の提案を行った。
また、分散システムを構築するための基本要素となる共有オブジェクトの無待機な実現法について考察した。-具体的には、本年度は、もっとも基本的な共有オブジェクトである共有レジスタに対し、その無待機な実現法を提案した。
また、設計した分散アルゴリズムの性能評価のために、BSPやCGMとよばれる並列計算モデルの利用可能性について検討した。このために、本年度は、いくつかの並列アルゴリズムをこれらのモデル上で設計し、これらの並列アルゴリズムを実際のネットワーク環境で動作させ、分散アルゴリズムの性能評価へのBSPとCGMの適用可能性を示した。

研究成果

• [文献書誌] Michiko Inoue: "Efficient linearizable implementation of shared FIFO queues and general objects on a distributed system" IEICE Transactions. E81-A・5. 768-775 (1998)
• [文献書誌] 守屋 宣: "共有メモリシステムにおける同期時間最適な自己安定無待機時計合わせプロトコル" 電子情報通信学会技術研究報告. COMP98-18. (1998)
• [文献書誌] Akihiro Fujiwara: "A parallel algorithm for Euclidean distance transform on the mesh" Proc.International Conference on Parallel and Distributed Processing Techniques and Applications. 1726-1733 (1998)
• [文献書誌] Takashi Ishimizu: "Parallel algorithms for finding all nearest neighbors" 電子情報通信学会技術研究報告. COMP98-42. (1998)
• [文献書誌] Sen Moriya: "Self-stabilizing wait-free clock synchronization with bounded space" Proc.International Conference on Principles of Distributed Systems. 129-143 (1998)
• [文献書誌] Kunihiko Hayashi: "A layout adjustment algorithm for disjoint rectangles preserving orthogonal order" Proc.Sixth Symposium on Graph Drawing. 183-197 (1999)
• [文献書誌] 須田 克朗: "線形化可能性を保証する共有オブジェクトの無待機な実現" 電子情報通信学会技術研究報告. COMP98-73. (1999)
• [文献書誌] 寺田 雅人: "分散移動システムにおける全域チェックポイントについて" 電子情報通信学会技術研究報告. COMP98-74. (1999)
• [文献書誌] 大堀 力: "分散移動システムのための前後関係保存放送プロトコル" 電子情報通信学会論文誌. J82-D-I・2. 425-435 (1999)
• [文献書誌] Satoshige Ukena: "A self-stabilizing k-exclusion protocol with k-wait-freedom" 電子情報通信学会技術研究報告. COMP98-87. (1999)
• [文献書誌] Akihiro Fujiwara: "A cost optimal parallel algorithm for weighted distance transforms" Parallel computing. (採録決定). (1999)
• [文献書誌] 石水 隆: "選択問題を解くBSPモデルおよびBSP^*モデル上の並列アルゴリズム" 電子情報通信学会論文誌. (採録決定). (1999)
• [文献書誌] 林 邦彦: "直交順序を保存する矩形の非交差配置問題" 電子情報通信学会論文誌. (採録決定). (1999)