研究概要 |
本研究は,組合せ最適化問題に対する高性能近似アルゴリズムの研究をネットワークフローと半正定値計画法に基づいて行い,それらの有用性とその限界を究明することを目的としている.より具体的には,最大充足化,最大独立集合,多種フロー,最小被覆集合,最適クラスタリング,VLSIレイアウト設計,解の高速列挙などのネットワーク問題および幾何学的な問題に対する高性能近似アルゴリズムをネットワークフローと半正定値計画法,さらにはこれらに匹敵する新手法,に基づいて提案し,その近似性能および計算量を理論的に解析すると同時に,そのアルゴリズムの実用性を計算機実験を通して実証する.併せてその限界も詳細に検討することを目的としている.今年度は研究の最終年度であるということで高性能アルゴリズムの提案および計算機実験に重点を置いて研究を遂行し以下の成果を得た. ・CMOS組み合わせ回路の最大消費電力を評価することは低電力回路設計の上で極めて重要なことであるが,様々な要因があるため極めて困難な問題である.この問題に対して近似率1.7の近似アルゴリズムを与えた. ・MAX DICUT問題の半正定値緩和問題の得られた解に対して,特殊な確率分布に従うランダマイズド算法を用いる事で,近似率が0.862の解法を設計することができた.この解法の設計には,様々な確率分布に対して,その近似率を数値的に計算し,最も良いものを選ぶという作業が必要である.そのため従来の近似解法の設計と異なり,大量の数値計算を行なう必要がある.この解法の近似率は,従来の近似解法の持つ0.859という近似率を上回っており,現時点ではMAX DICUT問題の近似解法として世界で最も良い近似率を持っている. ・VLSIレイアウト設計に付随する困難問題に対するアルゴリズムに関する研究,特に本年度は,高性能高集積マクロセルを歩留まり良く製造するための最適レイアウト合成手法を中心に研究を行い,多くの成果を得た.
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