研究概要 |
地理情報処理,移動体通信など様々な技術の進歩から,離散的な問題に対して,その構造が時間と共に動的に変化していく場合や,これから先に与えられるデータに関する情報がない状態で実時間的に問題を解かなければならない状況が現れてきている.そのような問題に対する統一的なアルゴリズム手法の開発を目的として研究を行っている. 本年度の研究では,計算幾何学における基本的概念であるVoronoi図と三角形分割に関して詳しく研究を行い,動的・実時間環境における拡張性について調べた.具体的には,Voronoi図において対象物が移動して行く場合である動的Voronoi図に対する研究を進め,重み付きVoronoi図の動的な場合に対する理論的解析を行った.また,点集合のマッチングに対して開発した手法を拡張することによって,動的Voronoi図を用いて,地理情報処理におけるラベル配置問題を解く手法を開発し,計算機実験を行うことによってその有効性を確かめた.このような問題は,インターネットの普及に伴ってWeb上の地図において,ラベルを自動配置の重要性が高まってきており,実時間的問題として重要である.Voronoi図に関する研究成果については,一部は準備中であるが,論文として発表を行った. 三角形分割は離散構造の基本的概念であり,また,コンピュータグラフィックスや有限要素法におけるメッシュ生成などへの応用から,様々な重要な問題がある.本年度はまず,三角形分割全体のなす離散構造を中心に研究を行ってきた.幾何構造の変化に対応するためには,どのような三角形分割が現れるかがわかっていることが望ましい.また,最適化問題を解く際にすべての三角形分割を求める必要のある場合もある.そのような観点から,比較的研究成果の多い平面の三角形分割から始め,高次元へ拡張できる性質,高次元での難しさなどに関して詳細な調査を行い,研究会で発表し,本の1章として公表した.
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