本研究では、地理情報処理や移動体通信に現れるような離散構造、そのうちでも特に幾何構造の動的・実時間的変化に対応できるようなデータ構造やアルゴリズムを計算幾何学的手法を用いて開発することを目標としている。 本年度は、地理情報処理で重要な問題となっている地図内に文字を配置するというラベル配置問題を重点的に扱った。昨年、この問題に対する予備的な計算機実験を行ったのに引続き、実際の地図作成の際に引出し線を用いた手法を取られることを念頭において、新たな配置アルゴリズムを実装し、昨年用いた手法との比較を行った。さらに、実際の路線図などを用いて、駅名、路線名を記入する実験も行なった。また、地理データベースから順に地名を表示させていくシステムなどへの応用においては、時間的に処理をしていく必要がある。そのような状況への拡張も試みている。 幾何構造の変化に伴って幾何構造の持つ位相も変化していくが、その際、位相不変量を計算することで、位相の変化をとらえることができる。位相不変量のなかでも、絡み目の識別能力が高いと言われるJones多項式に関する研究を行った。Jones多項式の計算は#P-hardであるが、提案したアルゴリズムによって、ある程度の大きさまで計算することが可能であることを実験によって示すことができた。
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