昨年度に引き続き、平面巡回セールスマン問題に対する動的計画法にもとづいた近似解法の開発を行なった。前半では、閉路被覆問題へ緩和し、連結制約を順次追加する解法の開発をおこなった。Aroraの多項式時間近似スキームにおいて動的計画法を直接実行する代わりにこの緩和解法を用いても実行時間は多項式であることを見い出した。これは、Aroraの多項式時間近似スキームの現実的な実装法として有望と思われたが、その後Aroraの動的計画法をそのままほぼ忠実に効率的に実装する方法を発見したため、不要となった。後半では、この効率的な実装に基づく初期解生成と局所探索法の研究を行なった。考え方は、非常に負荷の重い1回の動的計画法によって良い解を得ようとするかわりに、負荷の軽い動的計画法によってある程度良い初期解を生成し、また局所探索の各ステップを負荷の軽い動的計画法によって行なうというものである。初期解の生成と局所探索の各ステップはともに、良い巡回路を含みそうでありかつ疎なグラフを生成し、そのグラフに含まれる巡回路をすべて要素として持つような解空間のなかでの最適解を動的計画法によって求める。グラフの生成法についてはさまざまなヒューリスティックスを考案し、実験した。この方法により、TSPLIBで最大の約8万都市の例題でも、10分程度で近似誤差1パーセント以内の解を生成することができるようになった。現在、その実装のチューンアップを行なっている。
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