研究課題/領域番号 |
10206204
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 研一 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80110823)
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研究分担者 |
小穴 英廣 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20314172)
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キーワード | 熱力学パラメータ / コイル-グロビュール転移 / メゾスコピック / 単一分子鎖 / 折り畳み転移 / 長鎖DNA / 転移エントロピー / 凝縮転移 |
研究概要 |
理論・実験両面から単一分子レベルの折り畳み相転移に関しての研究が大きく進展した。理論的には、ブラウン運動を取り入れた分子動力学計算を行い、折り畳みの速度論的研究を行った。その結果、結晶核生成-結晶成長のプロセスを経て、ナノメーターのオーダーの秩序構造が生成されることを明らかにした。結晶核生成の確率はポアッソン的であり、成長は等速過程であることが示された。非平衡度が強くなると、スピノーダル分解により、無秩序度の高い球状の凝縮構造が生成することも明確となった。実験的には、赤外レーザーを用いる単一高分子鎖の輸送および構造制御の研究が進展した。実際には波長1000nmのYAGレーザーを用い、1μm程度の焦点にレーザー光を絞り込み、光による誘電トラップを行った。1000nmの濃度の光を用いているのでDNA分子には化学的修飾を与えることなく実験を行うことができた。膨潤したコイル状の構造の時はトラップされないが、折り畳まれたコンパクトな構造の時には熱ゆらぎに逆らって焦点に捕捉可能となった。折り畳み転移により、コンパクトな形状をとる長鎖DNAは、何らの化学的修飾を行うことなく容易に溶液中を輸送できることを示した。さらに、試料溶液中に凝縮剤の濃度勾配をつけておくことにより、DNAの構造の制御が無接触的に行えることも明らかにした。ここでcmオーダーの距離を数十秒で輸送できることは注目される。特徴的な拡散速度を考慮すると、cm離れた領域間は日のオーダーでは濃度差が保たれることが分かる。すなわち、本研究はcmスケールでのミクロな化学や分子生物学の"実験室"を、将来つくるための基本的な技術を示したものにもなっている。
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