研究概要 |
今年度は、RISM-SCF法による溶質分子と溶媒についての分子動力学計算に基づいて溶液内化学反応に対する反応経路ハミルトニアンを構築する一箱的な方法の提案を行った。更に、この方法を水溶媒中でのSN2反応CH3Cl+Cl-やメンシュトキン反応NH3+CH3X(X=Cl,Br,I)に適用した。前者に対しては、反応速度の透過係数が0.71となり、これは過去の分子動力学計算の結旺と良く対応している。また、溶液内での分子の電荷分極を表現する方法として以前に提案したcharge response kernelモデルに基づき水分子に対する3および5siteモデルを提案し、赤外とラマンスペクトルの計算を行い、実験結旺と良く一致する結旺をえた。更に、この5siteモデルを用いてN-メチルアセトアミドの水中での赤外スペクトルを計算し、スペクトル強度の大部分が電荷分極に起因することを明らかにした。更に、charge response kernel法を複雑な分子に適用した場合の電荷の決定についての不安定性を回避するための新しい方法を開発し、幾つかの代表的な溶媒分子に適用した。
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