平成12年度までに研究助成を受け、実験を行った結果として、平成13年度には以下の成果を発表することができた。 フェムト秒蛍光分光法を用いて視物質ロドプシンや古細菌の光センサーであるフォボロドプシンの励起状態からの蛍光を実時間で観測することに成功し、レチナールが光受容して起こる超高速異性化反応の速度を決定するとともに、蛋白質という反応場の特異的な役割を明らかにすることができた。バクテリオロドプシンの低温偏光赤外分光を用いた構造解析から、プロトン移動の受容体であるAsp85と水素結合を形成するThr89はスイッチを構成しないことがわかった。古細菌の光センサーであるフォボロドプシンは、バクテリオロドプシンと異なって光を情報へと変換するが、伝達蛋白質が存在しないと低い効率でプロトンをポンプすることが知られている。そこで低温赤外分光を用いたフォボロドプシンとバクテリオロドプシンの比較研究を開始し、類似のレチナール発色団構造や特異な水分子の水素結合構造などを明らかにした。古細菌ロドプシンと同様に、鍵物質レチナールを発色団とする視物質ロドプシン、ニワトリの赤感受性色素、緑感受性色素に対して低温赤外分光を行い、それぞれに特異な蛋白質構造を明らかにした。
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