フェムト秒の時間分解能を持つ、可視光ポンプー遠赤外光プローブ分光装置を開発するため、以下の実験を行った。(1)昨年度購入したフェムト秒チタンサファイアレーザーと増幅器を調整し、出力700マイクロJ/pulse、パルス幅50fsのパルスを1kHzの繰り返しで安定に得ることができるようになった。その際、部屋の空調を調整したり、レーザー防振台にビニールカバーをかけ、さらに空気清浄機をつけることにより、温度・湿度一定、防塵設備を作ることができ、安定発振を可能にした。この出力に対して光パラメトリック発振を行い、シグナル光及びアイドラー光を得、その二発のパルス光の差周波をとることにより、短パルス赤外光を得ることができた。波長領域2.5―25ミクロンメートルでサブマイクロJ/pulseを得ることができたが、これは遠赤外領域に近い長波長側では、世界最高の水準に匹敵する。(2)フェムト秒チタンサファイアレーザーのパルスをInASなどの半導体ウエファーに集光して得られるフェムト秒テラヘルツ電磁波(遠赤外光)を用いて定常状態の遠赤外吸収スペクトルを測定する装置を開発したが(分子研猿倉助教授との共同研究)、本年度は様々な分子系について測定を行った。ヘキサメチルベンゼンとテトラシアノエチレンを四塩化炭素中にとかして得られる錯体の分子間振動を観測することに成功した。また、25ミクロンの光路長を持つセルを用いて水溶液のサンプルの測定に成功し、蛋白質水溶液の測定などに応用した。
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