超高速可視光ポンプ-遠赤外光プローブ法による溶液中の反応ダイナミクスの解明

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10206207
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 富永 圭介 神戸大学, 理学部, 助教授 (30202203)
• キーワード: 遠赤外分光 / テラヘルツ電磁波 / 高出力赤外短パルス / 非線形分光 / 蛋白質 / 低振動スポエクトル / 集団運動 / 超高速レーザ分光

研究概要

凝縮相における化学反応ダイナミクスを実時間で観測することを目的として、2つの遠赤外-中赤外にその発振波長を持つレーザーシステムを製作・開発し、測定実験を行った。一つのシステムは、中赤外領域の分子内高振動モードに対する非線形分光の実験を行うためのものであり、高繰り返し高出力赤外短パルスレーザーシステムである。1kHzの繰り返し数を持つチタンサファイア再生増幅器の出力(パルス幅45fs)を負の方向にチャープをかけ、増幅部分に群速度分散補正を行った光パラメトリック発振/増幅(OPG/OPA)により、高出力(2.5-25μmの波長領域でサブμJ/pulse以上)のパルスを得ることに成功した。赤外短パルスの性能(スペクトル幅や時間幅)評価方法を新たに開発した。すなわち、時間幅測定として、GaAsの2光子吸収を用いる方法、第2高調波を用いない干渉型オートコリレーション法などを独自に開発し、赤外短パルスのパルス幅測定に有効であることを示した。もう一つはInAsなどの半導体表面に短パルスを集光して得られる遠赤外領域の電磁波を用いた分光手法の開発である。遠赤外領域に周波数成分を持つテラヘルツ光を用いて分子の集団的運動を調べている。タンパク質は天然状態でα-ヘリックスなどの規則的な構造をとるが、このヘリックスは遠赤外領域、約20-30cm^<-1>に特徴的なバンドを持つことが理論的に示唆されている。シトクロムcの天然状態、変性状態、モルテン-グロービュル状態の3種類の状態を作り、粉末固体のペレットを作成し、テラヘルツ光を用いて遠赤外吸収を測定したところ、5cm^<-1>から60cm^<-1>にかけてこの3種類で顕著な違いは存在しないことが明らかにされた。

研究成果

• [文献書誌] K.Tominaga: "Development of Two-Dimensional Raman Spectroscopy by Higher-Order Optical Nonlinear Spectroscopy"J.Luminescence. 87-89. 101-104 (2000)
• [文献書誌] K.Tominaga: "Concentration Dependence of the Fifth-Order Two-Dimensional Raman Signal"J.Chinese Chem.Soc.. 47. 631-635 (2000)
• [文献書誌] K.Tominaga: "Spectroscopic Application of THz Radiation Generated by Ulrtafast Pulses-Static Far Infrared Absorption Measurements in Condensed Phases-"Advances in Multi-Photon Processes and Spectroscopy. 14. 317-338 (2001)
• [文献書誌] K.Saitow: "Supercritical-Fluid Cell with Devices of Variable Optical Path Length Giving Fringe-Free Terahertz Spectra"Rev.Sci.Instrum. 71. 4061-4064 (2001)
• [文献書誌] K.Tominaga: "Investigation of Two-Dimensional Vibrational Spectra by a Diagrammatic Approach"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 74(No.2),. 279-286 (2001)
• [文献書誌] K.Ohta: "Excited-State Dynamics of all-trans-1,3,5,7-Octatetraene in Solution. Direct Observation of the Internal Conversion from the S_2 to S_1 State and Relaxation Process in the S_1 State ""J.Phys.Chem.,. (in press).