研究概要 |
本研究では等温等圧条件下でシミュレーションを行い,低圧でも水には低密度と高密度の2相があることを発見した.この2相は大気圧下では密度差は非常に小さく,高圧になるに従い密度差は大きくなること,また大きな負の圧力下では1相しか見られないことから,2種の液相の臨界点は浅い負の圧力領域にあることを予測した.比熱などの発散は臨界点とスピノーダル線の存在により説明可能となった.配位数や水素結合数など水に特徴的な性質が高密度と低密度の液体の基本構造において大きく異なり,低密度相の液体は氷よりもわずかに大きなエントロピーを有するだけで,氷の特徴である四面体構造と水素結合はほぼ完全に残っていることを示した.さらに,疎水壁に囲まれた水は比較的容易に特殊な二次元氷に相転移を起こすこと,およびその氷のプロトン無秩序性に由来するエントロピーの厳密な計算方法を発見した.2種の液体におけるポテンシャル面の性質の差異を明らかにするために,ポテンシャル曲面を描き,配置空間における両者の間の距離を調べた.高密度相から低密度相に,ランダムな移動で到達することは不可能であるが,その逆は可能であると考えられる.このため,基準座標に沿ったランダムであるが一連の4温度に対応する分子移動を試み,2相の中間の状態の状態密度と転移について検討した.
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